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東京高等裁判所 昭和60年(行コ)2号 判決

静岡権浜松市有玉南町一八六七番地

控訴人

株式会社毎日観光

右代者代表取締役

朴在春

右訴訟代理人弁護士

鈴木俊二

同県同市元目町三七番地の一

被控訴人

浜松税務署長

鈴木清彦

右指定代理人

杉山正己

三浦道隆

福田昌男

宮嶋洋治

吉野満

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は訴訟人の負担とする。

事実

一  控訴代理人は「原判決を取り消す。被控訴人が、控訴人の昭和四九年から昭和五三年までの各年五月一日から翌年四月三〇日までの各事業年度の法人税につき、昭和五五年六月三〇日付けでした原判決添付の別表処分欄記載の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分のうち、同表取消欄記載部分を取り消す。訴訟費用は第一・二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。

二  当事者双方の主張は、当審における追加主張等(従前の主張、認否の訂正等を含む。)として、次のとおり付加するほか、原判決の事実摘示と同じであるから、これを引用する。

1  控訴人

(一)  控訴人が片桐ら三名から本件持分の贈与を受けた、という被控訴人主張事実につき、これを認める趣旨の原審における控訴人の陳述を撤回し、右事実を否認する。本件持分は、昭和四九年三月初めごろ、控訴人代表者の朴在春が片桐ら三名から譲り受け、控訴人に対し、直ちにこれを代金七一〇二万六九七六円売り渡したものであるが、これに伴う登記手続にあたつては、中間者の朴を省略し、本件持分に係る被控訴人主張の所有権移転登記を経由したものであるところ、右代金のうち五四九万五一五一円は、その後、控訴人が朴に対してその支払をし、残金一六〇七万一八二五円は、片桐ら三名が本件土地の旧所有者に対し負担していた本件持分買受代金残債務の弁済にあてるため、控訴人から直接、右旧所有者に支払われたものである。なお、控訴人が、朴を経由することなく、片桐ら三名から直接、本件持分の譲渡を受けたことを前提とする原判決摘示の原審における控訴人の主張は、仮定的主張としてなおこれを維持するものである。

(二)  控訴人が本件持分の譲渡を受けたのは昭和四九年三月初めごろであり、遅くとも同年四月中にはその履行を終えたものである。なお、本件持分に係る前記所有権移転登記中の「昭和四九年八月一日贈与」という登記原因の記載は、登記申請書等の便宜的記載に基づくものにすぎず、実体関係に符号するものではない。してみると、右譲受けに伴う受贈益の存在を前提とする昭和五五年六月三〇日付けの本件処分は、国税通則法七〇条二項の除斥期間経過後に行われたものであるから、全体として違法・無効であることが明らかである。

(三)  本件持分譲受けに伴い、控訴人について、五三八一万一七八三円の受贈益が生じたものと仮定した場合の控訴人の本件各事業年度における所得金額、翌期繰越欠損金額及び法人税額等が原判決摘示の被控訴人の主張2(原判決五丁裏一〇行目から八丁裏八行目まで)のとおりであることは、これを認める。

2  被控訴人

控訴人の右主張(一)及び(二)のうち、原判決摘示の原審における被控訴人の主張に抵触する部分は、すべて争う。

三  証拠関係は、本件記録中の各書証目録・証人等目録記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

一  当裁判所も、控訴人の本訴請求は失当であり、棄却を免れないものと判断するが、その理由は、当審における控訴人の主張・立証の結果等をも参酌のうえ、左記のとおり加除訂正するほか、原判決の理由説示と同じであるから、これを引用する。

1  原判決一四丁裏一行目冒頭の「原告」から二行目の「経由し、」までを「本件持分について、昭和四九年八月一日贈与を原因として片桐ら三名から控訴人に対する所有権移転登記が経由されたこと、控訴人が」と改め、五行目の「甲第」の次に「一、第」を、七行目の「結果」の次に「(原・当審)」を、それぞれ加える。

2  同一五丁裏九行目の「片桐ら三名」から一〇行目の「譲受け、」までを「本件持分は、昭和四九年三月始めごろ、朴在春が片桐ら三名から譲り受けたうえ、即日、控訴人に対し七一〇二万六九七六円で譲り渡したので、控訴人は、本件持分」と、末行の「既払金五四九五万五一五一円を控除した」を「片桐ら三名の旧所有者に対する本件持分取得代金の」と、一六丁表一行目から二行目にかけての「主張するけれども、」を「いう趣旨の主張をし、前顕控訴人本人尋問の結果(原・当審)中には、右主張に符号する供述部分があるけれども同供述部分は、これを裏付けるべき資料がないうえ、その余の前期採用証拠との対比上もにわかに信用できず、他に、昭和四九年三月始めごろ、」と、それぞれ訂正する。

3  同一六丁裏九行目の「、九」削除し、同行の「結果」の次に「(原審)」を加える。

4  同一八丁表八行目の「使用借権」の次に「(使用賃借契約に基づく借主の使用収益権)」を加え、一〇行目の「少なくとも」を「大きくみても」と訂正する。

5  同一八丁裏四行目の「本件土地」の次に「周辺」を加え、七行目の「本件土地」を「当該土地」と改め、同行の「借地権」の次に「(建物の所有を目的とする地上権又は賃借権)」を、末行の「できない。」の次に「なお、弁論の全趣旨により成立の真正が認められる甲第三三、第三四号証も右同様の理由で本件土地の使用借権の価額を認定するための資料とはなり得ない。」を、それぞれ付加する。

6  同一九丁裏八行目の「である。」の次に「また、控訴人は、本件処分が国税通則法七〇条二項の除斥期間の経過後に行われた違法な処分である旨を主張するが、右主張は、控訴人の本件持分譲受け時期が昭和四九年三月初めごろであることを前提とするものであるところ、その前提事実はこれを認めがたいばかりでなく、右譲受けの時期が同年八月一日であることは前期認定説示のとおりである。してみると、同日の属する控訴人の事業年度(昭和四九年五月一日から昭和五〇年四月三〇日まで)の法人税の法定申告期限である昭和五〇年六月三〇日から五年内に行われた本件処分(昭和五五年六月三〇日付け)につき、控訴人主張に係る除斥期間経過の違法はなく、控訴人の右主張も採用できない。」を付加する。

7  同一九丁裏九行目の「によれば、」から二三丁表三行目の「ものである。」までを「のとおり、本件持分の譲受けに伴い、控訴人には五三八一万一七八三円の受贈益が生じたものであるところ、右受贈益の存在を前提とした場合の控訴人の本件各事業年度における所得金額、翌期繰越欠損金額及び法人税額等が被控訴人主張(原判決摘示の被控訴人の主張2)のとおりであることは当事者間に争いがなく、右争いのない法人税額等に基づいて、控訴人の昭和五三年五月一日から昭和五四年四月三〇日までの事業年度に係る過少申告加算税を算出した場合、その額が本件処分中の賦課決定の金額を超えることは明らかである。」と改める。

二  そうすると、控訴人の本訴請求をすべて棄却した原判決は相当であつて、本件控訴は理由がない。

よつて、控訴費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法九五条、八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 奥平守男 裁判官 尾方滋 裁判官 橋本和夫)

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